起業ってどう始める?STEP5|コンテンツから価値の提供へ

「起業」ってなんでしょうか。会社を起こすことでしょうか。それとも個人事業を始めるのも、副業をスタートさせるのも「起業」になるんでしょうか。

どこからが「起業」と言えるのか、「起業」ってどう始める?というテーマにまず私が起業したな、起業と言えたなというのはどこだったのかを考えてみました。
考えてるうちにこのお題そのものが自分が人に伝えることかもしれないと思い、私が起業人になった経緯を書くことにしました。

起業って、そもそもどういうことなんだろう?どうあるべきなんだろう?
そんな疑問に対して、少しでもヒントになれば幸いです。

(編集部)シリーズ起業ってどう始めるのStep5はプロフェッサーの.think(ドットシンク) 代表の川井 俊介氏による投稿となります。

コンテンツを作っても、仕事が続かない理由

私は元々は映像制作者であり、今はマーケターとしても活動しています。
映像制作とは、簡単にいうと広告代理店や企業から依頼を受けて映像をつくる仕事です。
会社員だった頃は、とにかく「かっこいい映像をつくること」が求められていました。
かっこ良ければ評価されるし、いい評価をもらえれば次の大きな案件もやれるしそれこそが正義。
そんなサイクルの中にいました。
だから独立したときも、「いい映像を作っていれば仕事は増える」と漠然と考えていました。
でも、実際はそんな甘いものではありません。

  • クオリティの高い映像をつくっても、新しい依頼がなかなか来ない
  • 高額な案件を受けても、その後が続かない
  • お客さんから「またお願いするね」と言われたのに、リピートがない

納品のときはすごく喜ばれるんです。
「最高です!」「これで完璧ですね」「またお願いします!」
そんな言葉をもらうと、やっぱり自然と期待してしまう。
「この映像を見た人からも問い合わせが来るかも」なんて思っていても現実は上記の通り次の仕事には思うようにつながりません。
ある時からクライアントと話す機会があったらその後どうだったか聞くようにしました。

そうすると、「もう使ってないんですよね」とか、「売り上げはそこまで変わってないかも」という予想していなかった答えが返ってきました。
他にも「ホームページに載せてるけど、あまり見られてなくて…」
「他に使い道がなくて放置しちゃってます」といった声もあって
正直、かなりショックでした。

(映像はいいんですけどね、なんてフォローされたのが逆に恥ずかしくなったのを今でも思い出してしまいます)
なんでこんなに良いものを作ってるのにちゃんと使ってもらえないのか。
うまく使ってくれさえすれば絶対効果が出るのに。

なんて不満を逆に持ったりもしました。

でも、あるときハッと気づいたんです。
映像に限らずビジネスにおいてのコンテンツの役割は「映像の美しさ・かっこよさ」を伝えることではなく「誰に、どんな価値を生み出したか」だと。

会社員のときは、営業や代理店が作り上げた仕組みが整っている中で映像を作っていれば良かった。
でも独立したらその“土台”から全部自分で考えないと、ただの“作業者”でしかありません。
そこから私は、映像そのものだけではなく、使い方やどの段階で何を伝えるかまでセットで提案するようにしました。

価値とは、相手を“変える”力

ある企業の採用映像をつくったときの話です。
まず考えたのは、「応募者がこの映像を見るのは、どのタイミングか?」ということ。
そして、「その流れの中にちゃんと組み込まれているか?」ということ。

この時私は独立して初めて企業の求めていることに真剣に向き合いました。

そして先方の希望であったそれまでのよくある会社紹介のような採用映像からは一歩踏み込み、企業の“パーパス(存在意義)”を伝える内容とSNSでの動画活用や運用、採用サイトへの流入までの動線計画をセットで提案してみたんです。

これが、僕にとっての「マーケティング思考のはじまり」であり、
“作業者”から“価値提供者”へと意識が変わったきっかけでもあります。

何を作るか」よりも「何を解決するか」

映像は、あくまで“手段”のひとつです。
大事なのは、「本当に相手の課題を解決する方法は何か?」という視点を持つこと。

その問いを持つようになってから、ようやく“本当の価値”を届けられるようになってきた気がします。本当の価値を考えていくと映像がベストな手段じゃない場合も当然あります。

なので映像制作の相談だったはずが全然違うものを提案しているなんていうことも今ではざらにあります。
大切なのは、何を作るか、じゃなくて、何を解決するか
そこに“価値”があるんだと思っています。

作業者から価値提供者へ――その変化こそが“起業”

思い返せば、独立したばかりの頃は「会社の看板を新調しただけのただの作業者」でした。

でも、“価値”を生み出そうと意識が変わったとき、
初めて「起業できた」と感じられるようになりました。

起業って、なにか特別なことを始めることじゃない。
ただ「誰かにとっての価値を生み出せる存在になること」それが本質なんだと思います