ゼロクリック時代のWebマーケティング。集客と商談のつながりを見直す

ゼロクリック時代のWebマーケティング。指名検索・AI流入から集客の採算を見直す

ゼロクリックとは?検索結果からサイトへ移動しない行動

ゼロクリックとは、検索結果から外部のWebサイトを開かずに検索を終える行動です。検索画面に表示された情報だけで用事が済み、リンク先へ進まないケースが代表例です。

  • 天気を調べる:「横浜 天気」と検索し、検索画面の予報や気温を見て終える。
  • 会社や店舗の情報を調べる:検索画面に表示された営業時間や電話番号を確認し、公式サイトを開かずに終える。
  • 用語や方法を調べる:AIによる概要で説明を読み、引用元の記事を開かずに終える。

天気などの情報を検索画面で確認する使い方は、AIによる概要が登場する前からありました。AIは、文章で尋ねる内容にも、検索画面だけで答えを得られる範囲を広げています。

会社側から見ると、検索した人に情報が届いても、自社サイトへの訪問が増えるとは限らないということです。検索画面で電話番号を見て問い合わせる人もいるため、サイトへの訪問数だけで、接点や成果のすべてを判断することはできません。

一方、AIの回答にあるリンクを押して自社サイトへ来た人は、AI経由の訪問として分析する対象です。サイトへ来ないゼロクリックと、AIからサイトへ来る流入を分けることが、集客の変化を把握する出発点になります。

ゼロクリックが増えると、記事から自社の商品やサービスへ案内してきた企業の集客はどう変わるのでしょうか。考えたいのは、アクセス数の減少だけでなく、記事の制作・更新にかけた費用で、どれだけ問い合わせや受注を得られるかです。

AI経由の訪問は購入や問い合わせにつながりやすい、という調査もあります。ただし、CVR(訪問に対して問い合わせや購入が発生する割合)が高くても、訪問数の減少を補えるとは限りません。指名検索、AI経由の流入、受注までの数字を分けて、コンテンツ集客の採算を見直す必要があります。

ゼロクリック率の上昇を、自社の流入減と結びつけすぎない

日本経済新聞の2026年10月18日付の記事は、ヴァリューズの調査として、検索結果から外部サイトへ移らないゼロクリック行動の割合が、2025年9月の63.5%から2026年7月の68.1%へ上昇したと報じています。

この調査の数値は、すべての会社のアクセスが同じ割合で減るという意味ではありません。

実際に自社のアクセスが減っているなら、検索順位、検索結果での表示回数、クリック数を分けて確認してください。需要の季節変動、競合、サイトの不具合、検索結果の見せ方などを調べずに、減少分をすべてAIのせいにすると対応を誤ります。

会社にとって重要なのは、「一般的な解説を読みに来る人が減った」のか、「見積もりを依頼する人まで減った」のかを見分けることです。

指名検索は重要。ただし「増える」「クリックされる」とは限らない

社名や商品・サービス名で探してもらう指名検索は、会社を知っている人との接点です。SNS、紹介、展示会、営業活動、AIの回答など、名前を知る経路は複数あります。AIで紹介されれば必ず指名検索が増える、という関係ではありません。AI内のリンクから直接訪問する人もいますし、引用元にリンクがあっても、回答の本文で会社名が紹介されるとは限りません。

また、指名検索そのものの画面も変わっています。Ahrefsの調査では、米国のパソコン版Google検索で、指名キーワードにAIによる概要が表示された割合は、2026年7月の月平均61.3%から9月には73.3%へ増えています。これは日本の中小企業の指名検索にそのまま当てはめられる数値ではありませんが、「名前で検索されれば公式サイトに来る」とは決めつけられない変化です。

担当者には、Search Consoleで指名・非指名検索を分け、次を並べてもらいましょう。

  • 表示回数:自社が表示される指名検索の機会は増えているか。
  • クリック数とCTR:表示されても、公式サイトへ来る割合が下がっていないか。
  • 相談や受注:名前で訪れた人が、どのサービスに関心を持ち、何を依頼しているか。

非指名検索が減れば、指名検索の件数が変わらなくても「指名の比率」は上がります。比率だけでブランドが強くなったと評価せず、実数も確認してください。Search Consoleの表示回数も、世の中で検索された回数すべてを示すものではありません。

利用できるサイトではSearch Consoleのブランド関連クエリのフィルタが使えます。表示されない場合は、社名・商品名の表記違いを検索語句で絞り込む方法があります。自動分類にも誤りがあり得るため、主要な語句は目を通してください。

AI経由のCVRは高いのか。調査の対象と成果を分けて読む

AI経由の訪問が良質である可能性を示すデータはあります。一方で、業種や比較対象によって結果は異なります。

調査の対象 分かったことと、比較の条件
Ahrefs自社サイト
2025年6月公開
直近30日間の分析で、AI経由の登録率は通常の自然検索経由の約23倍。当時のAI経由は全訪問の0.5%。同社の登録(signups)の実績で、他社の受注率ではない。
Adobe・米国小売サイト
2026年3月
AI経由の購入CVRは、非AI経由より42%高い。比較対象の非AIには、検索広告やメールなども含まれ、自然検索だけとの比較ではない。
Adobe・旅行分野
2026年3月
AI経由と非AI経由の差は縮まっているものの、AI経由のCVRは非AIより14%低い。AI経由なら、どの業種でも高いわけではない。

出典:Ahrefsの自社流入・登録の分析、Adobeの米国小売サイト分析、Adobe Quarterly AI Traffic Report(小売:8ページ、旅行:23ページ)。

AIで比較を済ませ、購入意欲の高い人がリンクを押している可能性もあります。例えば、AI経由は商品ページへの訪問、自然検索は用語解説への訪問が多ければ、その違いだけでもCVRに差が出ます。数字の高さを、AI経由に切り替えた効果と解釈することはできません。

自社では、同じ成果の定義・同じ期間で、訪問数、CV件数、CVRを一緒に見ることが先です。問い合わせ送信、資料請求、受注を混ぜず、訪問先のページや新規・再訪の違いも確かめます。件数が少ないと数件の増減でCVRが大きく動くため、「何件中、何件か」を必ず併記してください。

ChatGPTなどの参照元を識別できた流入と、Google検索内のAIによる概要・AIモードは分けて扱います。AI経由でも参照元が残らない場合があるため、「直接流入」や参照元不明をすべてAI由来とみなすのも適切ではありません。

CVRが上がっても、コンテンツ集客の費用対効果は悪化し得る

一般的な解説記事で集客し、サービスページへ案内して問い合わせを得る方法は、入口となる訪問数が減ると採算が厳しくなります。記事の制作費が安くなっても、取材、事実確認、写真、更新、担当者の工数まで含めて費用を見なければなりません。

以下は、同じ期間・同じ集客対象で比較する仮定の試算です。特定企業の実績や、調査のCVRを当てはめた将来予測ではありません。

項目 従来 → 流入減少後
訪問数 10,000 → 5,000
問い合わせCVR 1.0% → 1.4%
問い合わせ件数 100件 → 70件
制作・更新等の費用 30万円 → 30万円
1件の獲得費用 3,000円 → 約4,286円

CVRは上がっているのに、問い合わせは減り、1件を得るための費用は増えています。訪問数が半分なら、同じ問い合わせ件数を維持するにはCVRが2倍必要です。この例で元の獲得単価を維持するなら、費用は21万円以下にする必要があります。

訪問数とCVRから問い合わせ数を求め、制作・更新・社内工数を含む費用を問い合わせ数で割って獲得単価を確かめ、受注の粗利と比較する図解
CVRの上昇だけで判断せず、得られた件数と、そのためにかかった費用を確かめます。

ただし、問い合わせ獲得単価は利益そのものではありません。営業で対応できる問い合わせか、商談化するか、受注した顧客の粗利はいくらかまで確認します。実際の評価では、公開後の累積費用と成果の期間をそろえ、過去記事の成果や受注までの時間差も含めて判断してください。

つまり、コンテンツ中心の集客は「AIが来訪者を選別してくれるから大丈夫」とは言えません。流入減をCVR・受注率・粗利・費用の改善で補えない記事群は、従来より採算が悪化するという前提で、予算配分を見直す必要があります。

記事本数より、比較・相談に使われる情報へ予算を移す

コンテンツを一律に減らすのではなく、役割を変えます。用語の意味や一般論を説明する記事と、自社に依頼してよいかを判断する情報を分けてください。

  • 新規制作を抑える候補:似た用語解説を増やすだけで、サービス閲覧や有効な問い合わせへの寄与が確認できない記事。
  • 優先して直す候補:料金を左右する条件、対応できる範囲、導入事例、依頼から開始までの流れ、他の方法との違いが不足するページ。
  • 検索以外でも使う情報:営業が商談で繰り返し説明すること、既存顧客が紹介先へ送りやすい事例、SNSやメールで届けたい専門知識。

例えばWeb制作会社なら、一般的な費用相場を紹介するだけでなく、「原稿を支給する場合と取材から依頼する場合で、見積もりの何が変わるか」を示します。製造業なら、扱える素材、加工の条件、検査体制、図面がない段階でも相談できるか、といった情報です。AIにも読者にも、会社が何を引き受けられるのかが分かる状態にします。

会社名で思い出してもらうための発信も必要ですが、すべてのSNSに手を広げる必要はありません。顧客がいる業界の媒体、展示会、紹介、メールなどから接点を選び、事例や知識を継続して届けます。そこから指名検索や相談が増えたかを見て、次の費用を決めます。

Googleの公式ガイドも、AI検索で従来のSEOの基本が引き続き重要であり、独自の価値がある情報を優先するよう案内しています。AI対策を外注する場合も、引用数の保証や記事本数だけで契約せず、どの顧客の比較・相談を助けるページを改善するのかを確認してください。

次の報告から、指名検索・AI流入・受注を分ける

責任者が最初に依頼したいのは、次の項目を同じ評価期間で並べた報告です。Search Consoleやアクセス解析だけで分からない成果は、営業の記録と合わせます。

  1. 指名・非指名検索:表示回数、クリック数、CTR、主な流入ページ。比率と実数の両方。
  2. 識別できたAI流入:サービス別の訪問数、問い合わせ件数、CVR。入口ページと件数の少なさも確認。
  3. 営業の成果:有効問い合わせ、商談、受注、粗利。最初に会社を知った接点を聞き、解析の参照元と照合。
  4. かけた費用:制作・更新・外注・計測ツール・社内工数。問い合わせ獲得単価と、受注まで含めた回収状況。

GoogleのAIによる概要やAIモードでの表示は、Search Consoleの生成AIパフォーマンスレポートでも確認できます。ここで扱うのは表示回数であり、受注や利益の数字ではありません。表示が増えたことと、事業に貢献したことを分けて評価してください。

この報告を基に、「続ける記事群」「比較・相談向けに直すページ」「新規制作を減らす領域」を決めます。制作会社には、それぞれの作業範囲と費用を分けて見積もってもらってください。検索順位やPVを戻すことだけを発注目標にせず、どの相談や受注につなげたいかまで、会社側で指定することが大切です。