ファウンダー氷川に代わり、STEP3は私(池田豊隆)が解説させて頂きます。
------------過去記事------------
STEP1|なぜ起業したいのか?どう準備するのか?
STEP2|ビジネスプランを検証しよう
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流れは、以下の通りです。
- 1.行動計画作成
- a.経営理念立案
- b.資金計画立案
- c.年間/複数年の行動目標設定
- 2.損益計画作成
- a.売上・仕入・経費
- b.組織
- c.ノウハウとマニュアルの作成
「行動計画」と「損益計画」は、経営の方向性を明確にし事業の成功率を上げるために大切なアクションです。
金融機関や投資家などの外部からの信頼を得るためにも極めて重要ですので可能な限り具体的な計画を立てましょう。
1. 行動計画作成
a. 経営理念立案
目的:企業の存在意義(ミッション)・未来像(ビジョン)・価値観(バリュー)を明文化し、従業員・クライアント(ユーザー)・ステークホルダーと共有する。
起業したいと思う人には「実現したい未来」があるはずです。
「業界の価値を高める」「障害者が生きやすい世界を作る」など、ビジョンは自身が思い描ける最大級のイメージに設定するのがいいでしょう。
私は株式会社ワンポの他に株式会社デルタプリントという印刷会社の代表を務めています。
デルタプリントでは三代目の代表となりますが、現在のビジョンは私の代で決めたものです。
「世界から嫉妬される印刷会社」
このビジョンには、斜陽産業である印刷業界に明るい未来を示したいという思いが込められています。
印刷業界は少し固いイメージのある業界ですので、業界のイメージを明るく変えて、これから印刷業界で働く人たちにはもっと楽しく仕事と向き合って欲しい。その模範となる企業を作り上げるという考えでバリューを決めました。
「きちんと、はじける。」
周りから嫉妬されるくらい楽しく魅力のある業界を作り上げるために、ロジカルな思考の中にも遊び心のある自由な発想を忘れないで欲しいという気持ちでミッションを考えました。
「異彩で導く」
理念構築のポイント:
- ミッション・ビジョン・バリューに一貫性があること
- 人の記憶に残ること
- 抽象的過ぎないこと
- 経営判断の基準として機能すること
理念は、経営者の自己満足で終わってはいけません。
周りがワクワクする、共感者が増える、そして実際の経営に繋がる具体的な言葉にまで落とし込んでください。
b. 資金計画立案
目的:事業開始・運営に必要な資金の調達と、その使途を明確化する。
中小企業にとって最も重要なものはキャッシュです。創業間もないうちは、銀行や投資家から資金を集めることは非常に大変なことです。起業したものの直ぐにキャッシュが尽きて倒産するといったことがないよう、緻密な資金計画を立てましょう。
具体内容
- 1. 初期費用の見積
- 設備投資
店舗工事費・機材購入etc.
- 開業費
登記費用・ホームページ制作費・マーケティング費etc.
- 運転資金
最低3ヶ月分の固定費(可能であれば6ヶ月分以上) - 2. 資金調達方法
- 自己資金
個人の貯金から資本金の形ですべて賄えるのが理想
- 銀行融資
起業時は実績が無いので、日本政策金融公庫が無難(割と緩い)
- 補助金・助成金
起業時には国からの支援が受けやすい
- エクイティ出資
技術的な優位性など特徴のある会社であれば1つの選択
経営権の点でデメリットが生じやすいので注意 - 3. キャッシュフロー計画
月次ベースで収支と支出を計算して現金残高をシミュレーション
安定した小規模経営を望むのであればキャッシュフローとしっかりと向き合っている限り火傷しにくい
起業前に資金と予算を使途ごとに細かく分け、各項目の数字と流れをきちんと理解しましょう。
c. 年間/複数年の行動目標設定
目的:目標達成までのロードマップを描き、事業の進捗を管理しやすくする。
個人的には中期5ヶ年計画を立てることをお勧めしますが、起業前から5年先のことをイメージするのは難しいので、最終目標(極論、10年後でも20年後のイメージでもいい)を決めた上で、先2-3年の数値目標とそれを達成するための行動目標を設定すればいいと思います。
起業時に大切なことは、同業または類似業種の企業を徹底的に調べることです。
ライバル企業がどのようなアクションをどれだけの量こなしているのか、その結果どのような業績を達成しているのかを把握しましょう。
その上で、優先的に何を実施すべきか、そしてそれらのアクションをどれだけ実施することで目標数値をクリアできるかの仮説を立てます。
そうすることで、KGI・KPI・KDIが決まってきます。短期間でKGIを変えることはないですが、明らかに目標達成が困難だと判断される場合はKPIとKDIは短期間で変更しても構いません。四半期に1回または月に1回くらいのペースで、目標・行動・結果に違和感がないかを確認してください。
1期目から黒字化することが理想ではありますが、事業内容によっては難しいケースもあるため、最低限の収支は以下のイメージを持つといいでしょう。
- 1期目
下半期の売上・利益が上半期を下回らない - 2期目
1期目の粗利益・営業利益を下回らない - 3期目
営業利益・経常利益がプラス域である
2. 損益計画作成
a. 売上・仕入・経費
目的: 収益性の見通しを立て、経営の持続可能性を証明する。
稀に人間性だけで成功する人もいますが、経営者は数字に強い方が圧倒的に有利です。
とは言え、経営経験の無い人が1期目からすべての数字を理解するのは困難ですので、まずは以下の数字だけ意識してください。
なお、意識すべき数字の単位は、(目標)年商の桁数の1%でいいです。年商1億円なら100万円、年商3,000万円なら10万円単位で数字と向き合いましょう。
意識すべき数字:
- 1. 売上
- 商品・サービスごとの販売単価×数量の総額 - 2. 原価
- 資材費、仕入原価、外注費 - 3. 粗利益
- 1から2を差し引いた金額 - 4. 固定費
- 人件費、家賃、水道光熱費、通信費、広告費etc. - 5. 営業利益
- 3から4を差し引いた金額 - 6. 経常利益
- 5から営業外収益・損益を差し引いた金額
ポイント:
まずは、売上を最大化することを考えます。当然ですが、売上無くして事業の成功はあり得ません。
次に原価を抑えることを考えます。ここを雑にすると利益効率が上がりません。仮に売上1億円で原価5,000万円の会社の経常利益が200万円だとすると、その会社が原価を4%下げれば経常利益は2倍の400万円になります。
売上を増加させて経常利益を倍にするのは非常に大変です。なぜなら、売上が増えると比例的に原価と固定費が上がる傾向にあるからです。原価を下げることは利益増に直結するので、利益効率のいいアクションと言えます。
但し、原価を下げることで商品・サービスの品質が下がり、売上まで下がることがありますので、品質と原価のバランスには十分注意をしましょう。
b. 組織
目的:効率的に業務を行える体制を構築する。
組織作りを考える上で、1期目から理想の体制を整える必要はありません。最初は、社長が中心となって1人2役・3役で仕事を回していけばいいのです。
4-5名の組織でも、複数の業務を1人が兼任すれば業務は円滑に回るものです。
1期目の現実的な体制は以下のようなイメージです。
- 社長 全体統括・新規開拓・資金調達
- 営業 新規開拓・顧客対応・販促企画
- 製造 商品企画・製造・生産管理
- 事務 会計処理・給与計算・発注業務・在庫管理
2期目以降に、スタッフの増員とともに、企画・管理・営業・事務などの業務を少しずつ割り振っていけば問題ありません。
なお、組織構築における重要なポイントは、採用と教育です。
5名でスタートした会社において、各人の稼働率が120%まで成長したのであれば、理論上は1人採用しても会社は利益を確保できます。事業計画としっかりと向き合い会社を成長させて計画的な採用と教育を実施してください。
たまに人的な先行投資をして失敗している会社を見かけますが、営業スタッフを増やせば比例的に売上が増えるほど組織作りは単純ではありませんので、その点は要注意です。
生産体制・販路・市場規模を考慮した上で、最適な人員で組織を構成していくことが重要です。
c. ノウハウとマニュアルの作成
目的:品質と業務効率の安定化、新人教育の簡素化。
多くの中小企業が抱える問題は「属人化」です。
一部の仕事ができるスタッフが多くのタスクを抱えてしまう、自分の評価を下げたくないという気持ちからノウハウを共有しないスタッフがいる、など会社にとって都合の悪い状況が生まれています。
そういった問題を解決するためには、ノウハウの共有やマニュアルの作成を会社の文化とする必要があります。
はっきり言います。業務の8割は、やれば誰でもできるものです。
経営者または幹部が徹底的に管理して、すべての業務を「誰でもできる」状況にまで持っていきましょう。
接客マニュアル・クレーム対応・商品製造手順・管理システム操作・営業スクリプトと聞いて、マニュアル化が難しいと感じる項目はありますか?すべて簡単にマニュアル化できますよね。
マニュアルを作成するために特別なツールを導入する必要はありません。
Word・Google Docs・動画などで作成すれば十分です。定期的に改訂しやすいようにメンテナンス性の高いテンプレートを作成することをお勧めします。
なお、近年はIT化が進んでいますので、DXを前提にした業務フローを構築したり、AIを活用した事務作業を徹底することも、業務の効率化や非属人化を実現するために大切な考え方です。
以上、簡単ではありますが、事業計画を考える上で大切なことを書かせて頂きました。
最後に補足となりますが、事業計画を立てる際には上記の内容に加えて「お客様」「商品」「販売」における具体的な方針を必ず決めてください。経営者は、毎日が決定の連続です。しかし、これら3つの方針が明確であれば、経営の迷いは一気に軽減されます。
起業されるみなさまが、世の中から求められる価値ある商品・サービスを作り上げ、「実現したい未来」へ繋がることを心より祈念しております。