起業ってどう始める?STEP6|実践/法人設立に関しての手続き、決め事、事業所、開業資金まで

新規事業を別法人にする、個人で始めた事業を会社へ移す。法人設立を決めると、登記以外にも、出資、事務所、契約、届出、資金繰りをそろえる必要があります。

経営者が先に決めたいのは、誰が出資し、誰が経営を担い、いつ取引を始めるかです。そのうえで、司法書士や税理士に依頼する範囲と、社内で用意する資料の担当を決めてください。部門責任者が準備を進める場合も、会社形態や出資条件まで担当者任せにしないことが大切です。

株式会社か合同会社かは、出資者と経営の方針から選ぶ

株式会社と合同会社は、設立手続きや経営の仕組みが異なります。費用の差だけで選ばず、将来の出資者、経営に関わる人、利益の分配、事業の引き継ぎ方を合わせて検討しましょう。

株式会社は、株式を使った外部からの出資を想定する場合に検討しやすい形です。合同会社は、公証人による定款の認証が不要で、設立時の登録免許税の最低額も株式会社より低くなります。具体的な手続きは、法務省の株式会社の設立手続と合同会社の設立手続で確認できます。

合同会社でも、出資者全員が日々の仕事を同じように担うとは限りません。業務を執行する人、重要事項を決める方法、退任や出資の扱いを相談し、定款などに反映します。共同創業や分社化では、意見が分かれた際に誰が何を決めるかを、設立前に確認しておくことが必要です。

社名・ドメイン・事業目的を、取引を始める前に確かめる

社名は、類似する事業者の名称や商標、検索結果、希望するドメインを確認してから決めます。既存のブランドと混同される名前や、顧客が会社を見つけにくい名前は、営業上の負担になることがあります。

商号と商標は同じものではありません。会社名を登記できることだけで、サービス名の使用に問題がないとは判断せず、権利が関わる場合は弁理士などへ確認してください。

ドメインは、Webサイトに加え、メールアドレスとして使いやすいかも考えます。CO.JPは、日本国内で登記された会社が原則として1組織1つ登録できる種類です。JPRSの登録対象を確認し、希望の文字列が空いているかを調べます。会社のドメインと管理権限は、担当者個人だけに持たせないようにしましょう。

定款の事業目的には、現在行う事業と、実際に予定している事業を整理して記載します。許認可や金融機関への説明に影響することがあるため、単に幅広い言葉を並べるのではなく、扱うサービスを司法書士などへ伝えて確認してください。本店所在地、機関設計、決算期も、移転予定や経理業務を踏まえて決めます。

資本金と設立費用は、開業後の支払いまで含めて考える

資本金は、事業に必要な支出を支える資金です。登記上の少額だけを目標にせず、設備、仕入れ、家賃、給与、外注費と、売上を回収するまでの支払いを見積もって決めてください。設立費用と、開業後に残す運転資金を分けて計算します。

登録免許税は、通常、資本金の額の0.7%で、最低額は株式会社15万円、合同会社6万円です。支援制度による軽減等が使える場合は条件が異なるため、設立地や申請条件を確認してください。

株式会社の定款認証手数料は一律ではなく、資本金や設立条件によって変わります。紙の定款か電子定款かによっても費用が異なります。日本公証人連合会の案内を確認し、公証役場や依頼先へ、自社の条件で必要な費用を問い合わせましょう。

司法書士へ依頼する場合は、報酬と実費、定款作成・認証・登記の対応範囲を分けて見積もってもらいます。「自分で進めても費用差はわずか」と一律に判断せず、社内で使う時間、必要な設備や手続き、修正時の負担も比較してください。

私自身、法人設立の手続きを進めた際に、参照していた本の情報が古く、公証役場で書類の訂正を求められた経験があります。以前使った書式があっても、そのまま流用せず、現在の手続きと会社の条件を確認することを勧めます。

事務所は、月額料金以外の条件を確認する

住所を借りられることと、実際の事業や契約に使えることは別です。登記、許認可、来客、郵便、従業員の勤務、金融機関への説明に支障がないかを確認してから契約します。

  • 自宅:固定費を抑えやすい一方、賃貸借契約や管理規約、事業利用、住所公開の範囲を確認します。
  • バーチャルオフィス:住所・郵便受取などの利用範囲を確認します。作業場所を借りる契約とは限らず、許認可や取引先の条件にも注意が必要です。
  • レンタルオフィス:利用人数、会議室、受付、通信、追加料金、退去条件を確認します。人数が増える場合の総額も比べます。
  • インキュベーション施設:支援内容、審査、入居期間、退去後の移転費用を確認します。支援を受けられる範囲は施設ごとに異なります。
  • 事業用物件:敷金等に加え、内装、什器、通信工事、原状回復まで見積もります。業務に必要な面積から判断し、創業人数だけで広さを決めないでください。

登記後の届出は、担当と提出期限を一覧にする

法人の登記が済んでも、税務や社会保険、雇用、業種ごとの手続きが残ります。税理士などへの依頼に含まれる作業を確認し、社内で対応するものには担当と期限を付けてください。会計ソフトの導入だけで、必要な届出が全て済むとは限りません。

国税庁の案内では、法人設立届出書は設立の日以後2か月以内、初年度からの青色申告の承認申請は、設立の日以後3か月を経過した日と最初の事業年度の終了日のうち早い日の前日までです。給与を支払う場合や、適格請求書発行事業者の登録を受ける場合なども、必要な手続きを個別に確認します。

手続きの一覧には「提出先・期限・担当・必要書類・提出済みの確認」を記録します。設立日や決算期を決める際に、最初の申告・届出の準備期間も確認しておくと、期限直前の手戻りを減らせます。

飲食、酒類の販売など、許認可が必要な事業は、契約や設備投資を進める前に管轄の窓口へ相談します。営業開始に必要な条件を満たしてから、顧客と開始日を約束してください。

資金調達は、入金時期と会社が負う条件を比べる

資金が足りなくなる時期を、売上の計上ではなく、実際の入金と支払いで確かめます。調達する金額と必要な日を出してから、融資・出資・購入型クラウドファンディングを比較しましょう。

融資:返済を含めた資金繰りを作る

融資は、契約に従って元本や利息を支払う資金調達です。借りられる額をそのまま使うのではなく、売上の回収が遅れた場合でも、毎月の支払いと返済を続けられるか確認します。利率、保証や担保、据置期間、手数料なども比較してください。

日本政策金融公庫は、創業時の資金調達と創業計画書の相談を案内しています。顧客、販売方法、取引条件、必要資金、収支の見通しを資料にして、設備の発注や契約を確定する前に相談しましょう。融資は審査を経て決まるため、希望額の入金を前提に支出を約束しないでください。

出資:議決権と経営への関与を確認する

株式会社で外部から出資を受ける場合、通常の借入のような返済とは異なる一方、株式や投資契約に関わる条件を負います。持株比率だけでなく、議決権、取締役の選任、重要な判断への同意、報告義務、株式の譲渡などを専門家と確認してください。

創業時だから外部出資を検討しなくてよい、と一律には決められません。事業の成長に必要な資金と、経営への関与をどこまで受け入れるかで判断します。共同創業者からの出資も、役割、退任時の扱い、会社に残す権利を明らかにします。

購入型クラウドファンディング:集まる額より、提供後に残る資金を見る

製品やサービスを支援者へ提供する購入型では、集まった金額をそのまま開発費へ使えるわけではありません。手数料、製造原価、梱包・配送、問い合わせ対応、外注費、税務上の扱いを確認し、提供までに必要な支出を計算します。

入金までの間に試作や広告の費用がかかる場合もあります。手数料や入金条件は利用するサービスと契約によって異なるため、募集を始める前に確かめてください。受注数が増えた場合と、目標に届かなかった場合の両方で、提供と資金繰りを続けられるかを確認します。

設立の依頼前に、社内でそろえること

  • 経営の条件:会社形態、出資者、経営担当、重要事項の決め方。
  • 事業の条件:社名、事業目的、必要な許認可、所在地、取引開始日。
  • 費用と資金:設立の実費・委託費、設備投資、入金前の運転資金、調達時期。
  • 手続き:専門家へ任せる範囲、社内の資料担当、登記後の届出と期限。
  • 開業後の管理:契約名義、会社の管理権限、会計処理、引き継ぎ先。

この条件をそろえて見積もりと手続きを依頼すると、専門家に任せる作業と、経営者が判断する事項を分けて進められます。準備表には、未決定の項目の担当と決定日も記載してください。

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